毎日きちんとシャンプーをしているのに、頭が異常にかゆくなったり、明らかにフケが目立つようになったりした場合は、脂漏性皮膚炎になっている可能性があります。ちょっとかゆい、たまにフケが出るというぐらいであれば、湿疹や頭皮の乾燥などが考えられますが、この状態を放置してしまうと脂漏性皮膚炎になるリスクが高くなります。
脂漏性皮膚炎の厄介なところは、刺激性皮膚炎やアトピー性皮膚炎などほかの皮膚炎と症状がとてもよく似ていることです。当然ですが、脂漏性皮膚炎とほかの皮膚炎は治療法が異なるため、勘違いをして自己流でケアをしてしまうと脂漏性皮膚炎が悪化することもあるので注意しなくてはいけません。ここでは、脂漏性皮膚炎の原因や改善策などを詳しくご説明していきます。
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皮脂の分泌量が多いところに発症する脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎は炎症性皮膚疾患の一種で、皮脂の分泌量が多い頭皮や顔、背中、脇の下、胸などに起こりやすい皮膚炎です。皮脂は、適切な分泌量であれば汗などと混ざり合って、皮脂膜という肌を守る膜を作る役割をしています。皮脂膜は天然の保湿クリームと呼ばれるぐらい保湿力に優れているので、皮脂膜は肌にとってとても大切なバリアとなってくれます。
しかし、過剰に分泌されると皮脂膜の生成に使われなかった分が皮膚の上で酸化していやなニオイを発生させることもありますし、排出が追いつかず毛穴に詰まってニキビや吹き出物の原因になることもあります。
また、皮脂は肌に存在している常在菌の餌にもなるので、過剰分泌で肌に残ってしまう皮脂を常在菌が食べて繁殖する原因になります。すると、炎症が起きたりかゆみが起こったりする脂漏性皮膚炎を発症してしまうのです。
皮膚炎は種類によって自然に治るものもありますが、脂漏性皮膚炎の場合は治療が必要です。的確な治療をしないと、症状がよくなってもすぐに再発したり、慢性化したりすることもあるので、症状の重症度に関係なくしっかりとした治療をしなくてはいけません。
刺激性皮膚炎との違いはかゆみを引き起こす原因
刺激性皮膚炎は、製品や物質による刺激でかゆみが起こる皮膚炎です。刺激の度合いによってかゆみの強さが違いますが、脂漏性皮膚炎のかゆみとよく似ているので、かゆみが慢性化していない状態だとどちらの皮膚炎か判断しにくいです。
ただし、刺激性皮膚炎と脂漏性皮膚炎はかゆみの元がまったく違います。脂漏性皮膚炎の原因とされているのは、肌に常在しているマラセチアというカビです。マラセチアが皮脂や古い角質などを餌として分解するときに遊離脂肪酸が生成され、これが炎症反応を引き起こすことでかゆみなどが発症するといわれています。
一方、刺激性皮膚炎は何かに触れることで引き起こされるので、たとえば帽子をかぶったり、整髪料をつけたりしたときだけかゆくなるのであれば、刺激性皮膚炎と判断できるでしょう。
アトピー性皮膚炎との違いは強いかゆみと病変
アトピー性皮膚炎は、バリア機能の低下によって異物が侵入しやすくなっていたり、遺伝など特定の物質に対してアレルギーを持つ体質だったりすることで発症します。
軽度のアトピー性皮膚炎の場合は、かゆみの強さも脂漏性皮膚炎と似ています。しかし、基本的にアトピー性皮膚炎は非常に強いかゆみを発症するため、異常なかゆみが起こる場合は脂漏性皮膚炎ではないと考えられます。
また、アトピー性皮膚炎は強いかゆみだけではなく皮膚が病変するという特徴を持っています。頭皮だと確認しづらいかもしれませんが、紅斑や湿疹などの症状が現れると同時に、強烈なかゆみが起こります。
ただし、脂漏性皮膚炎を放置すると、落屑や湿疹など似たような症状が出ることもあるため、かゆみなどを感じたら早めに医療機関を受診しておくのがベストです。
脂漏性皮膚炎の原因として考えられる4つのこと
脂漏性皮膚炎を引き起こす直接の原因はマラセチアという菌と皮脂の過剰分泌です。しかし、皮脂が過剰に分泌される要因も間接的には脂漏性皮膚炎の原因といえるでしょう。
皮脂の分泌量というのは、生活習慣によって変わることも少なくありません。生活習慣の中に皮脂の分泌量が増える原因がある場合は、そこを改善する必要があるので、自分の生活習慣と照らし合わせてみましょう。
油分や糖分の摂りすぎ
揚げ物や炒め物が大好き、外食をする機会が多い、甘いものやスナック菓子を毎日食べているという方は、食べ物に含まれる油分や糖分を摂りすぎる傾向にあります。
油分や糖分は肥満に直結する成分であり、さらに皮脂の分泌にも関係しています。これらの成分は皮脂腺を刺激する性質を持っているため、過剰に摂取すると皮脂腺への刺激が強くなり、皮脂の分泌量を増やしてしまうといわれています。
就寝時間や起床時間がばらばらで睡眠が不規則
毎日夜遅くまで起きていたり、就寝や起床時間が毎日違ったり、眠りが浅く寝ても眠気が取れないなど、睡眠に問題がある方は、自律神経が乱れやすくなっています。自律神経は体温や血液の流れなど、生命維持活動をコントロールする神経です。そのため、自律神経の乱れが皮脂の適切な分泌量を乱してしまうこともあるといわれています。
また、寝ている間には成長ホルモンが分泌されて、肌細胞などのダメージを修復したり、肌機能の低下を回復させたりすることで、健やかな肌を保っているといわれています。不規則な睡眠のせいで成長ホルモンが十分に分泌されないと、頭皮の機能が回復せず、バリア機能が低下し、皮脂の過剰分泌が引き起こされることもあるようです。
ストレスのせいでホルモンバランスが乱れている
ホルモンには、肌の水分を保持したり潤したりするなど、皮膚の状態を健やかに保つための働きがあります。そのため、ホルモンバランスが乱れると、皮膚の状態が悪化することで、皮脂の分泌量が増える可能性があります。
ホルモンバランスを乱す原因はいろいろありますが、現代人に多いのはストレスです。ストレスが溜まるとホルモンの分泌量をコントロールしている自律神経が乱れ、皮脂の分泌量が多くなることがあるようなので、注意しましょう。
パーマやカラーリングによるダメージ
パーマをかけたりカラーをしたりする方は、頭皮に大きな負担をかけています。
頭皮は、紫外線や皮脂汚れなどでダメージが蓄積しやすい環境にありますが、さらにパーマやカラーリングの薬剤を使うと、長期間ダメージが残ってしまいます。ダメージによって頭皮が乾燥すると、体は皮膚を守るために皮脂の分泌量を増やす働きをするといわれています。
頭皮のケアをまったくしていないと皮脂はどんどん分泌されるので、ダメージとともに頭皮環境を悪化させてしまいます。
脂漏性皮膚炎になった場合の3つの改善策(治療・ケア)
脂漏性皮膚炎になってしまったら、まずは医療機関でみてもらうことが大切です。以下では脂漏性皮膚炎の治療と日常生活でのケア方法をご説明します。
炎症を鎮めるステロイドで症状を改善
脂漏性皮膚炎は皮膚に炎症が起こっている状態なので、その症状を悪化させないために、まずは炎症を鎮めるステロイド外用薬を使います。ただし、ステロイドは常用性があるため最初は弱いものを使い、かゆみの度合いに合わせて強さを調節していきます。
また、ステロイド外用薬はあくまでも症状を改善、緩和するために使うものなので、長期間の使用は避けたほうが賢明です。医師の指示どおりに使用するのはもちろん、あまり効果がないようであれば、思い切ってこの治療は止めてしまったほうがよいでしょう。
脂漏性皮膚炎の治療は抗真菌薬が中心
脂漏性皮膚炎を根本から改善するための治療では、マラセチアの活性を抑制する働きを持つ抗真菌薬を使います。抗真菌薬は水虫の治療にも使われるケトコナゾールを使うのが一般的です。最近は、最初から抗真菌薬を使用することも多くなっているようです。ステロイドを使うことに不安がある場合は、医師に相談してみるとよいでしょう。
皮脂をしっかり落として頭皮を清潔にする
いくらマラセチアの活性を抑えても、頭皮が皮脂などで汚れた状態では、すぐに炎症が再発してしまいますし、治療の効果も出にくくなります。脂漏性皮膚炎の場合、治ったように思えても、皮脂が多く分泌されている限り再発のリスクは消えません。ですので、頭皮を清潔に保つことも対処方法の1つといえます。
頭皮を清潔にするためのバスタイムのポイントは、シャンプーの際すすぎをしっかり行うことです。シャンプーやリンスなどのすすぎ残しが、脂漏性皮膚炎のきっかけとなることもあります。シャンプーやトリートメントというのは、肌にとても残りやすいので、髪が密集している頭皮についたものを落とすには、相当しっかりとすすがなくてはいけません。
しかし、シャンプーであれば、泡が消えたらリンスやトリートメントはぬめりが消えたらすすぎ完了としてしまう方が多いようです。残念ながら、いくら泡が消えても髪のぬめりが消えても、頭皮にはまだまだ成分が残っています。これが積み重なると、皮脂や汚れと混ざり合って毛穴に詰まってしまい頭皮環境が悪化します。
そのため、すすぎはいつもより3分長く行うのを目安にしてください。シャワーを頭皮に当てるイメージで、できればすすぎながら指で頭皮の毛穴を揉み込んで、しっかりと成分を落としましょう。
脂漏性皮膚炎を放置するリスク
脂漏性皮膚炎の初期症状はかゆみが起こる程度なので、この段階で治療の必要性を感じる方は少ないかもしれません。
しかし、放置をしてしまうとかゆみはどんどん強くなりますし、頭皮環境が悪化するため、フケも出始めます。フケは落としきることができないので、いつの間にか肩に大量に落ちてしまったりして、不潔な印象を与えてしまいかねません。
さらに怖いのは、薄毛が引き起こされるリスクが高くなるといわれていることです。頭皮環境は髪の成長に影響を与えるので、環境が悪化していると髪の成長が妨げられて抜け毛が増え、髪が生えてこなくなることもあります。
脂漏性皮膚炎によって薄毛になってしまうのは珍しいことではないので、絶対に放置せず早めの治療を心がけましょう。
脂漏性皮膚炎は放置しない!
皮脂の過剰分泌によって起こる脂漏性皮膚炎は、かぶれや湿疹と同じようなものと捉えている方も多いかもしれません。
確かに症状としてはかぶれなどと似ていますが、脂漏性皮膚炎は皮膚の疾患であり、原因がマラセチアというカビなので、治療の必要があります。
そもそも、脂漏性皮膚炎の状態が続くと、シャンプーをしたりブラッシングをしたりするときに頭皮が不快ですし、かゆみやフケなどで不潔な状態が続くことになります。
頭皮は健康な髪を育てる土台にもなるものですから、常に清潔な状態を保てるように、しっかり改善をして、すっきりと清潔感のある頭皮を取り戻しましょう。
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